下川裕治「週末台湾でちょっと一息」(朝日文庫)

2019年9月14日土曜日

下川裕治

t f B! P L

 「週末バンコクでちょっと脱力」に続く週末シリーズの書き下ろし。

もともと下川氏のシリーズにはタイ・バンコクもの、飛行機・鉄道ものに加えて、沖縄ものがあるのだが、台湾の旅行記は、どちらかというとその「沖縄もの」の一環であったように思う。

今回は、最近ちょっと手あかがついてきた感がある「沖縄」から少し独立して「台湾」を正面からとらえたものとしては興味深い一作。


構成は


第一章 空港バスが淡水河を越えるときー日本からの飛行機

第二章 台湾式連れ込み安宿に流れ着いたーハンバーガー屋のメニューに入り込んだ蚤餅

第三章 ご飯とスープを勝手によそって、台湾に来たな・・・と思うービールを勝手に冷蔵庫からとり出す店の値頃感

第四章 自転車で淡水往復 五十キロの表道と裏道ー北海岸をバスで走り、テレサ・テンの墓へ

第五章 夜市の蟻地獄テーブルに座って、赤肉食加里飯を逃すー下に刷り込まれてしまった日本食

第六章 濃密な自然のエネルギーを腕の痒みで知らされるー漢民族のなかの軋轢

第七章 独立派の根城のビールが教えてくれる"政治の時代"ー台湾省

第八章 北回帰線から鹿港へ。清の時代の街並みのなかで悩むー各駅停車で台湾一周を試みたが

第九章 台湾在住者が提案する週末台湾


で、「週末バンコク」と同様、数日間の短期旅行としてのしつらえは同じである。


ただ、バンコクと違って、(最近の領土問題を巡る事象は出てこないまでも)中国との台湾の微妙な立ち位置や第二次世界大戦時の日本軍統治の時代の複雑な案件は垣間見えて、親日的な感じにほっとしつつも、手放しで"南国最髙"といったノーテンキな状態にはならないのはしょうがないところ。


さりとて、下町の食堂の風情や料理、夜市のメニューで昔風のカレーライスがあることやタクシー運転手の気の優しさなど、他の国とは違う台湾ならではの「なごみ感」を行間に感じるところが、当地の嬉しいところではある。さらに、挿入されている写真を見ても、繁体字といえ「漢字」があるのは、やはり漢字文化圏の日本人としては安心感を紡ぎだす作用があるのは致し方ない。

観光案内、現地案内として読もうとすると期待はずれになるが、異国の、しかも日本に近しい国の現地の佇まいを楽しむには良い本である。


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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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