イタリアと日本が混合された「人生指南」 ー ヤマザキ・マリ「とらわれない生き方」(メディアファクトリー)

2018年9月11日火曜日

ヤマザキマリ

t f B! P L

 「テルマエ・ロマエ」や「プリニウス」など古代ローマを舞台にしたマンガで、一躍売れっ子になったヤマザキ・マリさんの人生の悩み相談、人生指南書が本書『「とらわれない生き方 悩める日本女性のための人生指南書」(メディアファクトリー)』である。


筆者は、若い頃単身渡欧し、イタリアでマンガを書きながら、イタリア人の詩人と結婚→離婚、その後、イタリア人研究者と結婚、彼のとても「イタリア的」な家族と同居しながら、子育てをし、という、かなり「濃い」人生を送ってきている人なので、その「人生相談」も、とても面白く、副題に「悩める日本女性もための」とあるのだが、女性専用にしておくのはもったいない。


【構成は】


1章 自分の中の「マザー」を見つける

2章 愛するほどに「空い」は満ちてくる

3章 女こそ人生を「楽しむ」責任がある

4章 人生の処方箋と「タガ」の外し方


となっていて、主に、1章が「仕事」、2章が「恋愛と結婚」、3章が「子育て」、4章が「人生全般」についての人生相談である。


【仕事については、現実的になるべき】


有為転変の激しい筆者の「人生相談」であるから、回答も、一筋縄ではいかず、例えば、仕事についての回答では


自分がどんなに優れていようが、世の中に認められていようが、ほかの人だって才能は持っているわけで、いつ自分を超えていくかはわからないんです。自分が認められなくなる日が来るかもしれませんしね。プライドを持つのはいいですが、そこに溺れてはいけないんです。


といったようにとても「現実的な回答」や


「お金はお金として稼ぐんだ」とわきまえて、同時に自分がやりたい絵を続けるようにしました。そのプライドを保つことによって、生活のための仕事もできていたんだと思います。


といった風に、昨今の「やりたいことをやって生きていく」という論に対して、マンガで食えなかった時代を乗り越えてきた「したたかさ」が滲み出てもいる。


では、「刻苦勉励」がオススメかというと、そこは、あの「イタ〜リア」に長く暮らして、そこに馴染んでしまった筆者であるから


失敗をしたとしても自分を保護する自分がイタリア人の中には必ずいる

 

イタリア人ってみんな、「自分、生まれてありがとう!」という強い自己肯定ベースがあるように思う


といったように、なんとも「イタリア的いい加減さ」が最後のところで出てくるのがよろしいですな。



【子育てで大事なこと】



このあたりは、「子育て」の面でもそうで、自らの音楽家の母親との暮らしの様子などを思い出しながら、


母親の理想を子どもに押しつければ、期待どおりにいかないと、親にも子にもストレスがかかります。子どもはそれゆえに親から愛情をもらえないと勘違いもする。 何かの代償としての子育ては、必ずどこかで歪みが生じます。


と、「親目線」で子どもの将来に干渉や指示をしてしまう日本の親子関係に釘を刺すことを忘れないし、


ヨーロッパで子どもを育てて感じるのは、 学校は教育や教養を学ぶところで、モラルや 躾 を教えてもらおうなんて、誰も期待してないということです。 そうしたことは全部、家でやる。日本の感覚とは大きく違っています。


と、とかく国家主義的な色合いを帯びてしまう日本の教育者、親たちもそろそろ「学校の限界」というものを認識して、筆者の言う、こどもにとっていちばん大事なことである『「生きていれば嫌なこともいっぱいあるけれど、幸せになる権利は誰にでもある」ということ』、を教えることぐらいは、自分自身でやっていかないといけないでしょうねと思うのである。


【まとめ】


長く外国に住んでいる人の、こういう類のエッセイの中には「△☓国(外国の国名)が一番、日本はダメ、私はそれを脱出したので、私エライ」といったものが散見されるのだが、ありがたいことに、本書はそんな臭いがかけらもない。イタリアの良いとこは良いとこ、日本の良いとこは良いとこ、ときわめて理性が働いている。

その根底にあるのは


ここで大切なのは「マザー」の存在です。私の中には常にもうひとりの自分がいるんですが、そのもうひとりの自分のことを「マザー」と呼んでいます。 心の核に存在する、ゆるぎない自分という感じでしょうか。 分かりにくければ「自分観音」と呼んでも構いません


といった「自分自身の立脚点の確立」が一番大事ということであろうな、と思った次第。とかく、大きな流れに流されやすい当方としては反省しなければなりませんな。


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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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