鹿児島の出身で日本警察の基礎を築いた「川路利良」を中心人物にすえて、ペリー艦隊の来訪から安政の大獄を経て明治へ続く幕末の時代を、「ハコヅメ」の作者・泰三子が、倒幕の片翼を担った「薩摩藩」や「彦根藩」の視点から描いた幕末歴史コミック・シリーズ「だんドーン」の第2弾。
前巻で斉彬に見出され、薩摩藩の裏工作を扱うこととなった川路だったのですが、本巻では薩摩藩の開明派の主柱であった「島津斉彬」の横死に直面します。
あらすじと注目ポイント
第2巻の構成は
第八話 うちの殿が一番
第九話 褒められて伸びる天災
第十話 さあ以降ファーイースト
第十一話 早世の名宰相
第十二話 雲なき明日へ
第十三話 黄昏時に国を照らす
第十四話 勅を終え!with恋の探訪記
第十五話 隠しているのは性具?密勅?
第十六話 堕ちてゆく天下
となっていて、冒頭では、斉彬暗殺のため、離れ瞽女に化けて薩摩に潜入した、彦根藩の多賀者の頭「タカ」の動きが描かれます。腕利きの忍びらしく、川路たちに接近して斉彬の情報を得ようとするのですが、「生きては帰れぬ、薩摩飛脚」と言われるように鉄壁の護りを誇る薩摩の忍び「山くぐり衆」の前では、さすがの「タカ」も正体を隠し通せなかったようです。
そして、彼女の尋問は川路が行うのですは、彼女は自分の雇い主が井伊直弼であったり、薩摩の斉彬と斉興との対立構造を語るとともに「お由羅派」とのつながりまでほのめかして、川路たちの動揺を誘います。最後には「日向送り」と言われる藩外での密殺の処分を受けることとなるのですが刑吏の隙をついて、まんまと逃亡してしまいます。これがどういう結果を招くかは後段で明らかなります。
中盤では、一橋派や幕府の老中たちの反対を押し切り、井伊直弼が大老の職を得ます。家筋的には妥当な登用なのですが、純粋で苛烈な性格の彼が就任したことで幕政は大きく動き始めます。ここで、早く亡くなったことで今まで注目を浴びることの少なかった「小松帯刀」が登場するのですが詳細は原書のほうで。
この政治情勢の中、井伊大老や南紀派を牽制するため、島津斉彬がとうとう兵一千を率いて上洛することを決め、準備に入るのですが、ここで処刑を逃れた多賀者の「タカ」の毒牙が・・という展開です。
後半部分では、島津斉彬を喪い、斉興派が復活し、薩摩の方向性が変わったため、井伊直弼によって、一橋派が蟄居や隠居などの厳しい処分を受けるなか、近衛公や月照和尚を中心に起死回生の手が考えられています。幕府の外国との条約の締結を咎め、公武一体を進めよ、という偽の勅書を出して、水戸藩始め一橋派に政権運営を奪回しようという「戊午の密勅」事件です。
この勅書を水戸家に届けるため、三つ(「西郷隆盛と水戸藩士兼薩摩藩士・日下部伊三治・有村三兄弟の長男・有村俊斎」、「有村三兄弟の次男・有村雄助と日下部裕之進」、「有村三兄弟の三男・有村次左衛門と日下部まつ」)に分かれて江戸を目指します。誰が本物の密勅を持っているかわからなくして、追手の多賀者の目をくらます戦法です。これに加えて、川路と四ツ目屋忠兵衛も江戸へ向かって出立し、という形で二重三重の仕掛けがされています。さて、本物の密勅は誰が・・というのが後半の肝ですね。
レビュアーのひとこと
本巻では井伊直弼が大老となり、島津斉彬が亡くなるという幕末の歴史を大きく転換させた事件が描かれているのですが、島津斉彬の死因については、公式のコレラ説から腸チフス・赤痢説、さらには暗殺説までいろいろ噂されています。本書では彦根藩の忍びの頭「タカ」による暗殺説が採用されています。
多賀者自体の存在が疑問と思われるので、ここはかなりのフィクションが混じっているとは思いますが、
幕末史の大事件の隠された真相としては魅力的ではありますね。
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