下川裕治「5万4千円でアジア大横断」(新潮文庫)

2007年5月26日土曜日

下川裕治

t f B! P L

 ひさびさの骨太バックパッカー旅行記というべきだろう。

以前は「タイ」、最近は「沖縄」と、放浪系というよりは定着系の旅行記が多かった下川裕治氏が、東京からトルコまでの27日間の、なんと15車中泊のバス旅行である。

 

この旅行をしたとき、筆者は51歳らしいのだが、そこは長年の旅で鍛えられているだけあって"元気"である。アームチェア・トラベラーの私など、爪の垢を煎じて飲まないといけない。

 

しかし、まあ、この観光もない、食事といったら、およそ風情といったものの感じられないバスターミナルの冷えたコロッケ、サモサとかうどんといった、ただ、ひたすら、憑かれたようにバスを乗り継いでいく旅に爽快感を感じてしまうのはなぜだろう。

そこは、旅が豪華で贅沢であればあるほど、しっくりこなくなる貧乏性もあるのかもしれないが、やはり、「旅行記」というものの根幹が、各地の観光スポットのレポートや、名物料理のレシピではなくて、「移動する」ということ、あるいは距離的、時間的な移動の周囲に発生するさまざまなログないしはノイズであるということなのであろう。

あるいは、そこで指向されているのが、一定の方向を目指す目的性というものでなく、日々、移動し、存在することによって生ずるさまざまなものを、「記録」していく、ということであるからかもしれない。

 

ま、こんな小理屈は置いといて、"バスタブの湯の色が、中国では1週間で真っ黒になるが、インドではわずか1日の旅で真っ黒になる"とか"18年前は地獄の振動バスであったイランのバスが今では、非常に快適なバスの生まれ変わっている"とか、"インドには豪華長距離バスというものが存在しない、長距離の路線バスがあるだけだ"とか、この種の旅行記には必須である旅の一つ話の類もきっちりと載せられている。

 

ひさびさに貧乏旅行記が読みたいなー、というときにお薦め。


以前、読んだ貧乏旅行記のはしばしを思い出させてもくれる旅行記である。


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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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